『 望郷 ― (2) ― 』
ドンドン ・・・ !
書斎のドアが 勢いよく叩かれた。
「 ? なにごとかね ・・・ 」
さすがの博士も 少し驚いて本から顔を上げた。
「 博士〜〜〜 博士! ちょっといいですか〜〜 」
ドアの外で ジョーが ― 叫んでいる。
「 なにかあったのか ・・・ おい どうしたね
お前にそんなに叩かれては ドアが参ってしまうよ 」
カチャ ・・・
いつだって鍵なんぞかけたことがないドアは すぐに開いた。
「 博士 博士〜〜〜 教えてください!
青い手紙って どこで買うんですか?? コンビニで売ってます?
住所の書き方 教えてください!
下の道のポストに入れれば フランスまでとどきますか??
代金って ○○ペイ で払えます?
」
飛び込んできたジョーは 矢継ぎ早に質問してきた。
「 ・・・ あ ・・・ ? 」
「 ですから! 青い手紙 です! 」
ぱし。 彼は握りしめているレターを 振り回す。
「 おいおい ・・・ それは さっきポストに入っていた
エア・メイル だろう ? 」
「 えあ めいる? 」
「 ・・・ もしかして 知らんのかい 」
「 初めてみました。 」
「 は あ ・・・ 時代は変わったのう〜〜〜 」
「 これ ・・ メール なんですか???
・・・ 固形e−mail ですか?? 」
「 手紙じゃよ 手紙! フランソワーズから来たのじゃろうが 」
「 フランからですけど ・・・ これも手紙なのかあ 」
「 お前なあ 手紙くらい受け取ったこと、あるじゃろうが 」
「 あ〜 なんかの広告か 請求書くらい かなあ
だってラインで済むでしょう? ふつ〜 」
「 それはそうだが ・・ それは お前のところに
遥か仏蘭西から 空を超えて飛んできたのじゃよ・・・
彼女の手書きの文字もいいじゃろうが 」
「 え ええ・・ フランって すっげキレイな字、書くんですよ
・・・ 見ます?? 」
「 彼女の字がキレイなのは 知っておるよ。
時々 ワシの手紙の清書なんぞ手伝ってくれるからな 」
「 清書 ・・・? へ え〜〜〜 」
「 ジョー。 手紙を書いた経験 ・・・ あるのかね? 」
「 え? あ〜〜 ほんチャンのは ないですねえ〜
学校で書かされただけ かなあ 」
「 そう なのか・・・ 」
「 えへ ・・・ ぼく 生まれて初めてもらった自分宛の
手紙 なんです。 フランからだし〜〜
あ〜〜〜 これ もう 宝モノだあ〜〜〜 」
ジョーは無邪気にエア・レターを 撫でている。
「 ・・・ それは 本当なのかい
」
「 はい。 あ〜〜 フランの字 って優しいなあ〜〜〜 」
彼の満面の笑みをながめ 博士はなんとも複雑な気分になってきてしまった。
近頃のワカモノは 手紙 を使わんのか ・・・
・・・ そういえば メンバー達への連絡は
全てメールだなあ ・・・
世界中に散っておるから 仕方ないが ・・・
ふうむ・・・ ラブ・レターなんぞ
書いたこともない のか ・・・
「 えへへ〜〜 ぼくのお宝 だなあ〜〜〜
ふふふ〜〜ん 枕の下にいれて寝〜ようっと♪ 」
もうジョーは 絵に描いたような < るんるんきぶん > である。
「 よかったのう で なんだって?
フランソワーズは元気に過ごしておるのだろう? 」
「 はいっ 久し振りのパリでのんびりしています って! 」
「 ほう それはよかった 」
「 で 博士! 返事ですよね! 既読・返信 はマジ、必須でしょ 」
「 あ ああ そうだが 」
「 それで! この青い紙、どこで売ってるのかな〜〜って
思って ・・・ コンビニにありますか? 」
「 さ ・・・あ・・・? 昨今、コンビニには置いてないだろうよ
それより文房具屋や大きな書店にあるのではないか 」
「 え 文房具屋?? ・・・ この町にないかも ・・・
小学校の前に ノートや鉛筆、売ってる店、あるけど
あそこで この青い紙 みたことないですし 」
「 すぐに返事を書くのかね? 」
「 はい! 今日出せば明日とどきますよね? 」
「 おいおい〜〜 フランスまで飛行機に乗せて運んで行くのだぞ? 」
「 え・・・ じゃ じゃあ ジェットに頼んだ方が速い・・・
いや だめだよ〜〜 中身 見られてたくないし〜 」
ジョーは 大真面目に悩んでいる。
「 ・・・ ああ エア・レターなら ・・・一通くらいまだ
引き出しに入っている と思ったが 多分 」
ごそごそ ・・・
博士はリビングに置いてある共有のデスクの引き出しを探った。
そこは共有のパソコン置き場 なのだが 実際に使うのは
博士とフランソワーズ、ピュンマくらいなものだ。
ジョーやジェットは ほとんどスマホしか使わない。
「 ほれ あったぞ 」
発掘された 青い紙 は端っこがすこし撒くれていた・・・
「 わ あ〜〜〜 ありがとうございます!
・・・ あのう〜〜 どうやって書くのですか 」
「 住所か? フランソワーズが書いてきた通り
書けばよいよ。 」
「 あのう ・・・ ぼく このナナメった続き字 ・・・ 読めないんです 」
「 は あ ・・・??? なんだって? 」
「 だから この・・・ ねろねろ〜〜〜っていう字、
知らないんです。 」
「 ・・・ 本気かい? 日本では中等学校から英語を学習する、
と聞いておるぞ? 」
「 そりゃ ね。 でも こういう字、習ってないんです。 」
ジョーはどうやら 筆記体 を学習していない世代なのだろう。
「 ・・・ なんということか ・・・・ 」
博士は驚愕しつつも フランソワーズの手紙の住所を
ささささ・・・っと ブロック体で書いてくれた。
「 わ〜〜〜〜 ありがとうございます〜〜〜
えへ ・・・ なに 書こうかなあ〜〜〜
あ 温室のいちご 豊作です とか ・・・ 」
「 おいおい・・・ 帰ってきてほしい 一日千秋の想いだ とか
書いてやれ 」
「 え? いちにちせんしゅう ってなんです?
張大人の国のヒトの名前ですか? 」
「 お前さんの国の言葉じゃろうが!
・・・ あとで辞書を引いておけ 」
「 はあい ・・・ めんどっち〜な〜
」
「 なにか?? 」
「 い い〜〜え なんでも ・・・
あ 今度、 裏庭に畑、作ってみたいんですけど いいですか
大根 とか ネギ、植えて〜〜〜 採れたて、激ウマだと・・・ 」
「 おう いいぞ。 温室モノも美味いなあ 」
「 ですよね〜〜 なんでも採れたてって最高〜〜 」
「 そうそう この前の ほれ・・・ ごった煮カレー。
あれ とてもウマかったぞ〜〜〜 」
「 え 本当ですか??? へへへ 冷蔵庫に残ってた
萎びナス とか 温室で熟し過ぎたトマトとか ・・・
そうそう大根なんかも入れちゃったんですけどね 」
「 いやあ いい味じゃった。
ジョーも料理の腕を上げたなあ〜 と思ったよ 」
「 えへへ ・・・ 嬉しいなあ 」
「 フランソワーズが帰ってきたら びっくりするぞ。
さあ さっそく返事を書くのだろう? 」
「 はい! ・・・ フランって すごいですよねえ・・・
こんなキレイな字で 日本語で 書いてくれてて・・・
ぼく フランの国の言葉、全然書けないもんなあ 」
「 ・・・ 彼女の努力はすばらしいよ。
まあ お前も料理の腕を磨いておけ。 」
「 はい。 いろいろね スマホで調べてます。 」
「 うむ うむ ありがとうよ 頼むな。
」
「 任せてください! あ そうだ・・
博士 虫除けの装置 つくれます? 」
「 ?? 虫? 作物の害虫駆除か? 」
「 いえ ぼく 無農薬栽培めざしてるんで・・・・
夏の虫です〜 ぷ〜〜〜ん・・・って来るじゃないですか 」
「 ああ 蚊の駆除かい 」
「 はい。 一発で蚊の寄り付かなくなるすぷれ〜 とか 」
「 ふふん ・・ お前さんの国には すでに
最強の武器があるじゃないか 」
「 さいきょうのぶき?? 蚊に、ですか? 」
おう、と博士は応じると テーブルの下に屈みこんだ。
「 ?? なんです それ。 ウチにあるんですか? 」
ごそごそ・・・
「 これさ。 これが 鉄板! 」
でん・・・ とジョーの前に鎮座したのは 蚊取りぶ〜さん。
「 え 蚊取りぶ〜さん が最強の鉄板?? 」
「 ぶ〜さん ではなくて。 いや これも最強だが。
問題は その中身だ。 」
ずむ。 博士の手には半分燃えた緑色の渦巻が。
「 ・・・ 蚊取りせんこう が・・・? 」
「 そうじゃ。 これは除虫菊という植物由来の製品で
副作用は ない。 そして ほぼ全ての蚊は落ちるか 逃げる。 」
「 あ〜 それは そうですけど・・・
なんかこう 〜〜 しゅば〜〜〜っと一発 皆殺し みたいな 」
「 化学薬品は 環境と生物に悪影響を及ぼす。
ジョー 畑仕事の時には 携帯用の蚊取りぶ〜さん を作ってやるから。
それを腰に下げるんだな 」
「 ・・・ うへえ ・・・ 」
「 では 早速作ってくる。
」
「 は はあい ・・・ 」
博士は 颯爽と足取りも軽く書斎に行ってしまった。
蚊取りぶ〜さん かあ ・・・
ぼくはさあ 刺されることはないけど
やっぱ ぷ〜〜〜ん ってくると
鬱陶しいんだよなあ ・・・
博士は 刺されないのかなあ
「 そりゃ・・・ ぼくだって ぶ〜さん、好きだけどさあ ・・・・ 」
ジョーは 蚊取りぶ〜さん を改めてしげしげと見つめるのだった。
「 この緑のぐるぐる・・は 植物由来なのかあ・・
なんか化学薬品を固めたんだと思ってた・・・
あ〜 でもさあ あのちっこいマット入れたりする方が
効くよ〜な気がするけど・・・
」
ま いっか。 つん。 彼は蚊取りぶ〜さんを突っついた。
「 そうだよ〜〜〜 フランに えあ・れた〜 書くんだった!
えっと えっと〜〜〜 なんて書こうかなあ・・・
えへへ らぶ・れた〜 って初めて書くよ〜〜ん♪ 」
博士からもらったエア・レターを広げる。
改めて向かい合ってみると ― 言葉が出てこない。
「 ・・・ う〜〜〜 ふらんそわーず様。
お元気ですか。 えあ・れた〜 ありがとございました。
・・・ あと なに書けばいいんだろ・・・ 」
ボールペンは ちっとも進んでくれないのだ。
「 え〜と え〜と ・・・ 毎日 なんとなく雨が降っています。
傘 必須って天気予報でいってます。 そちらはどうですか?
・・・ う〜〜ん パリも梅雨なのかなあ 」
ふう〜〜〜 溜息ばかりが連続してしまう。
「 らぶ・れた〜 って どうやって書くんだろ?
・・ 好きです! ぼくはフランソワーズのことが好きです。
ああ〜〜 これじゃ 小学生の作文だよ〜 ・・・ 」
くしゃ・・・っと紙を丸め ・・・ ようとして 手が止まった。
「 やっば〜〜〜 コレ 一枚しかないんだっけ〜〜
えっと えっと えっと ・・・ う〜〜〜
近況報告だっけ。 温室の手入れをしました。
イチゴ も トマト も ちゃんと採れて、ごはんに美味しく
食べています。 きゅうり と なす も植えました。
ぬか漬け を作るつもりです。 めろん も植えました。
美味しい実が生るのが 楽しみです。
ツナ缶つかってオムレツ つくりました、おいしかったです。
うどんって知ってますか? 日本のぱすたで サラダうどん なんかも
美味しいです 」
・・・ ジョーは小学生の < 夏休みの日記 > みたいな
文章を連ねていた・・・
「 ・・・ で ぼくは フランが帰ってきてくれるのを
まってます。 一緒に おいしい めろん をたべましょう。 」
エア・レターはたちまちいっぱいになってしまった。
「 ・・・フラン、笑わない・・・よね?
最後、 どうしよう? あ そだ!
えっと 会いたいです、ふらんそわーず様。 ジョーより っと 」
ふう〜〜〜 ・・・ 特大のため息をつき、彼は慎重に
青い紙を封筒に入れた。
宛名は 一番始めに 博士が書いてくれたものを丸写ししてある。
「 あ 一応 < 様 > つけないとな〜〜 シツレイだよね。
うん・・・ これでよしっと。
あ ・・・切手! いいや 買い物ついでに駅前の〒局によれば・・・
フラン ・・・ 読んでください〜〜 」
ちゅ。
ジョーは こっそり ( 誰も見てなかったけど ) 書き上げた手紙に
キスをした。
「 あ 晩飯の支度! ・・・ なににしよっかな 〜〜
あ そうだ! この前 めっけたサバ缶! あれ 使ってみよっと
そうそう 手羽先、買ってあっただった〜〜
ま 野菜の買い出しもあるから ・・・ やっぱ自転車だな〜 」
数分後 今日もピンクのままちゃり が ギルモア邸前の急坂を
疾走していった。
― その日の晩御飯も 大成功〜〜♪
食後のまったりタイム、博士とジョーは サツマイモの茶巾絞りを
味わっている。
「 ・・・ あのう・・・ 味 どうです? もっと甘い方が?? 」
「 ん〜〜〜 んん いやいや この味がウマイ!
これは サツマイモだろう? ちゃんと芋の味も残っていて
それでいて 立派な和菓子になっておる。
・・・ん〜〜〜 ウマい! ジョー すごいなあ 」
博士はもう手放しでほめてくれる。
「 えへへ ・・・ そ〜ですか 嬉しいなあ〜〜
これ ね 八百屋のおばあちゃんが教えてくれたんです。
すっご〜〜く美味しそうなサツマイモがあって・・・
焼きいもにします〜〜 って言ったら おばあちゃん が教えてくれました。 」
「 ほう〜〜〜 これも伝統の和菓子なのかのう〜〜
いや ワシはこのままが好きじゃが これに生クリームでもかければ
立派なスウィーツだぞ 」
「 あ そっかあ〜〜 ・・・ フラン 食べてくれるかな ・・・ 」
「 そりゃ勿論☆ 栗やら芋は女性のお気に入りじゃからな 」
「 そうなんですか?? そっか〜〜〜
えへ ぼくもおいし〜と思います 」
二人はぺろり、とデザートを平らげた。
「 ジョー 手紙の返事、出したのかい 」
「 はい! 駅前の郵便局のポストに入れてきました!
フランスでも 円 なんですね〜〜 」
「 は?? 」
「 だって 切手。 郵便局のヒトに聞いたら ふつ〜の日本の切手、
だしてくれましたよ? 」
「 そりゃ この国で投函するのじゃから・・・
フランソワーズからの手紙を見て見ろ。 ユーロの切手が
貼ってあるじゃろうが 」
「 ・・・ あ〜〜〜 これかあ〜〜〜 このヘンな記号が
ゆ〜ろ なのかあ 」
「 ・・・ 学校では習わんかった か ・・・ 」
「 はい! あは でもね〜〜 さっきラインで フランにね〜
手紙だしたからね〜〜って。 へへへ 楽しみ〜〜 」
「 ・・・ はあ ラインで か 」
「 はい。 あ そうだ、博士〜〜 今晩のオカズ どうでしたか? 」
「 おう 今日も美味かったぞ〜〜 ジョー、ますます腕が上がったなあ 」
「 えへへ・・・ 缶詰使ったんですけどね
一緒に使った野菜は えっと・・・ なんてったなかなあ〜
あ 三浦半島の野菜 だそうです 」
「 ほう〜 地元産かい 」
「 今朝 採れたて、って言ってました 」
「 ふむ ふむ ・・・ ここいらの地域は本当に穏やかで
よい土地じゃなあ・・・ 」
「 なんでも美味しいし♪ 」
「 ジョー お前の生まれ育った地域は いい処じゃよ うん・・・
ワシはなんだか 故郷のような気がしてきた 」
「 ぼく達 ここが このウチが 故郷だと思ってます 博士。 」
「 そ そうかい ・・・ 」
「 だから明日もオイシイもの、食べましょう! 」
「 そうじゃな うん・・・ そうじゃなあ
皆の故郷 ・・・か。 そう感じてくれたら嬉しいよ 」
「 思ってますよ 皆!
え〜と ・・・ 熱いお茶 淹れますね〜 」
「 ・・・ ありがとうよ 」
とぽぽぽぽ・・・ 香高いお茶が 穏やか晩を締めくった。
そんな風に 梅雨時を過ごし、暑い夏もようよう超え
朝晩には涼風が立つ頃となった。
ジョーは わりと頻繁に < 青い手紙 > を書き
わくわくしつつ 投函していた。
・・・ 相変らず 食べ物の話題 ばかりだったけれど ・・・
フランスからは ちゃんと返事が来たけれど 季節の挨拶程度の
文面だった。
「 へえ〜〜〜 パリも暑いのかあ〜
フランの好きなあずき・ばーとかあるのかなあ・・・
< 親愛なるジョー > だって♪ えへへ〜〜〜 やったネ♪ 」
文通、それも海外の事情に全く疎い彼は
文頭の Dear Joe に 毎回感激し どの手紙も大切に大切に
引き出しの中に仕舞っていた。
暑熱の日々の峠を超えると 八百屋や鮮魚店、精肉店の店先にも
新しい顔が並ぶようになった。
キキキ −−−− ッ !
「 わほ〜〜い もうカボチャが出てたよ〜〜〜ん♪ 」
ジョーは ご機嫌ちゃんで自転車を降りた。
「 ふんふ〜〜ん♪ なににしよっかな〜〜〜
煮ても焼いてもオイシイよなあ〜〜
あ 今年はサンマ、 いっぱい獲れるといいなあ 」
よいしょ・・・っと 荷台から大荷物を降ろす。
今日は生活必需品の買い出しで ついでにカボチャを買ったのだ。
「 お米もオイシイのがとれるよね〜 ふんふん〜〜 あ?
ライン? え〜〜 誰かなあ 」
ふと 気づいてスマホを腰のポケットから引っぱりだす。
「 うん? あ〜〜〜 フランからだあ♪ 元気かなあ
え ・・・?!!!
「 ジョー ただいま! もうすぐウチです♪ 」
うっそ・・と 彼は何回も読みなおし
めちゃくちゃ慌てて マジ??? と送ったが ― 既読にならない。
「 ・・・ うっそ〜〜〜〜 ★☆☆ もうすぐ って もうすぐってこと??
え 〜〜・ 駅の辺りなのかなあ・・・ っていつ帰ってきだんだよ〜
わ わ〜〜 晩ご飯! なんにしよ???
えっと・・・食糧庫にあるのは〜〜 ツナ缶と豚の薄切りだけ ・・・
野菜! 野菜は 〜〜〜 大根と 今 買ってきたカボチャと〜〜〜
あとぉ ジャガイモ タマネギ・・・だけ??
温室! 温室になんかあるはず〜〜〜〜
あ! 博士〜〜〜〜 フランが帰ってきますよぉ〜〜〜 」
ジョーは 声を上げつつ玄関に飛び込んだ。
「 ただいま戻りましたァ〜〜〜 」
30分後 本当に 本当に フランソワーズは ギルモア邸の
玄関に 立っていた。
「 わ〜〜〜 お帰りぃ〜〜〜 フラン ! 」
「 おお おお 元気かい 」
「 博士 ジョー 今 戻りました
」
「 フラン〜〜〜 ね ちょっち待っててね〜〜
すぐに晩御飯だから! 」
ジョーは エプロン姿で腕まくりしている。
「 まあ ジョー・・・ なんだかとても似合っているわね?
あ あのね 張大人 と グレートも後から来るそうよ 」
「 え!!?? う〜〜〜〜 わかった〜〜〜
な なんとかする!
博士、 フランに冷たい麦茶と あずき・ばー 出してあげて
くれますか? 」
「 おう 了解じゃ 」
「 ジョー ・・・? 」
「 では ぼくは晩御飯の準備に没頭します! 」
ちゃ・・・っと敬礼すると 彼はキッチンに消えた。
― そして その日の晩御飯は〜〜〜
温室の熟れたトマトやらピーマン、ジャガイモ タマネギ そしてツナ缶で
スパニッシュ・オムレツ。 ケーキみたいに大きなお皿に盛った。
香ばしい匂いは 裏の畑でどっさり採れるナスに豚肉と大葉を挟み
焼き肉のタレでじゅ〜〜っと焼いたモノ。
あとは インゲンの胡麻和え、そして 大根と豚バラの煮物の常備菜が
並んだ。
「 うわあ〜〜〜 すごいご馳走ね ! ジョー 」
「 えへ ウチにあるものばっかりなんだけどぉ 」
「 すごいわあ〜〜 ジョーってば・・・ 」
「 ジョーはなあ しっかり我が家の料理人なんじゃよ 」
「 ほんとう・・・ 」
「 さ みんな たべて 食べて〜〜〜
大人〜〜 グレートも 皆で御飯♪ だよ〜う 」
わいわいと 久々に食卓が賑やかになった。
張大人は 常備菜の煮物をゆっくりと味わっている。
「 ジョーはん。 ・・・ これ どないしたん 」
「 え? あ〜 それ・・・ 大根と豚バラを炒めてから煮込んだんだ〜
へへ・・・ 博士も気に入ってくれてさ ウチの作り置きオカズ 」
「 ものすご・・・・ ええお味や〜〜 最高やで 」
「 え ほ 本当??
」
「 ほんまやで。 ワテの店でも出してええか? 」
「 もっちろん〜〜 うわあ〜〜 めちゃ嬉しい♪
あ そうだ デザートもあるんだよ〜〜 」
ガラスの器で運んできたのは 南瓜の甘煮に生クリームを乗せたもの。
クリームには ちょこっとブランディを垂らしてみた。
「 まあ・・・ キレイ・・! 」
「 ん〜〜 これは洒落た味だなあ 」
フランソワーズも グレートも 気に入ってくれた。
えへへ ・・・ やったぁ〜〜〜〜〜♪
じゃーーーー カチャカチャ・・・・
食後 並んで後片付けをしつつ ジョーはこそ・・っと聞いてみた。
「 ね フラン あのう〜〜〜 手紙 ありがと♪ 」
「 え ああ そうね、ジョーもたくさん ありがとう〜 」
「 えへ・・・ なんか すっげ嬉しかった ぼく。
フランは? あのう ぼくの手紙、 なんかつまんなくて・・・
ごめん ・・・ 」
「 え どうして?? わたし、ジョーの手紙で
・・・ 帰ってきたの。 あなたの手紙が 呼んでくれたわ 」
「 ・・・え ・・・?
」
わは ・・・
会いたいな〜〜って気持ち 通じたんだ?
えへへ・・・ やったぁ〜〜♪
ジョーは お皿を放り上げたい気分だった が。
「 わたし! ラディッシュ じゃなくて だいこん が
食べたくて。 パンプキン じゃなくて かぼちゃ が
食べたくて 食べたくてたまらなくなって〜〜〜
ねえ ジョー? わたし わかったの。 」
「 え ・・・ な なにが ・・・? 」
「 あのね! わたしの故郷は このお家だわ 」
「 あ は ・・・ ? 」
「 わたし だいこん や かぼちゃ が 食べたくて食べたくて
ウチの温室のトマトやイチゴが食べたくて・・・
ジョーの手紙を読むたびに もう〜〜
< ふるさと > に帰りたくてたまらなかったの!
そう ホームシックになっていたんだわ。 」
「 そ そう・・・? 」
「 ええ! もうね はやくこのお家でご飯が食べたくて・・・
あ〜〜〜 もうほっんとうにシアワセだわ わたし。 」
フランソワーズは 極上の笑顔をジョーに向けた。
「 ね! ジョーのご飯 ・・・ 最高〜〜〜♪ 」
あ は ・・・
・・・ なんか ぼく ・・・
めっちゃフクザツな 気分
・・・ シアワセ だけど。
********************** Fin. *********************
Last updated : 07.14.2020.
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********* ひと言 ********
馴染んだ食べ物って 大事ですよね〜〜〜
望郷の念 って あれが食べたいなあ〜〜 って
気分が すごく含まれている と思いません?
ジョーくん おさんどん 上手そうです (^◇^)